もう一人で家には置いておけない。
私は妹と二人で入居できる施設を探し回り、やっと入れる所を見つけたのですから、出るわけにはいきません。
入居して10年になりますが、最初自分で歩けるころ脱走して心配かけさせられたり、施設の方に食って掛かってたたいたりと毎回問題を起こしていた母の迷惑行動も減り、施設からの苦情も徐々に少なくなって来たのは私たちにとってはとても幸いなことでした。
電話の恐怖からは解放されています。
しかしそれとは反対に、母の認知症はだんだんひどくなり、面会に行った私や妹の名前が出てこず、寂しい気持ちで帰ることもしばしば。今はコロナで面会もできません。
ある日、面会に行った時、私達に向かって母が言ったのです、「今日は何を食べに行く?美味しいもの食べに行こうよ」と。
月に一度は母を特養から連れ出し、スーパー銭湯で顔そりとカット、マッサージ、母の好物を食べに行きます。体調のいい時はスーパーでウインドウショッピング、ドライブがてらの花見や紅葉など母の好きな事に時間を費やしています。
しかし、母は相変わらず文句を言い、あれがいいこれがいい、それはイヤだと好き勝手を言います。分かって言っているのか・・・。
それでも私達は一生懸命母の希望を叶え、望み通りに好きな場所に連れて行きます。今日も母から、お刺身が食べたいと連絡があると、姉妹どちらかが届けるのです。
なぜそうするのか、母の人徳か、もしくは私や妹弟が後悔をしないためなのか、この生活はまだまだ続きます。